今より少し未来。
ユビキタス特区(地区全体が情報化されたモデル都市)としてゼロから開発された初の地区。
生体情報を元にしたID一つで、すべての経済活動、健康状態から行動履歴まで管理されている、
数値化された人間の住む町。
山根の両親は離婚し、彼は父親と二人で暮らしていたが、中学を卒業した頃、父親にも捨てられる。
ある日、山根は自分のIDが無効になっていることを知る。
同時に、寝泊りするネットカフェに保住という女性が現れ、山根に父親の死を告げる。
彼女は父親の再婚相手で、名目上は継母、山根を引き取るという。
拒否する山根に保住は別のIDを与え、大学へ通うことを提案。
厭世的で引きこもりがちだった山根は、保住によって外に引き出される。
山根は大学で黒澤というボクシングをする女子と出会う。
黒澤は、真剣勝負で集中力が高まると「時間が延びる」感覚がするという。
黒澤の言葉に興味を持つ山根。
彼女も山根の境遇に興味を持ち、山根の父親について、そして彼の持つ仮のIDについて調べることを提案する。
生きることに意味を見出せず、消極的な山根は、生き急ぐような黒澤のペースに巻き込まれていく。
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